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2009年03月01日(日)更新

【久米信行新刊】Q4-1:否定されるのが怖い

10万部突破!『すぐやる!技術』の著者であり、当「経営者会報ブログ」のプロデューサーでもある久米信行さんの次回作ご執筆原稿をリアルタイムで公開させていただいております!
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Q4-1:否定されるのが怖い
A4-1:受け流し、跳ね返し、転じていく


 「何か言うと笑われそう」
 「みんなが白い目で見ている」


 奥ゆかしい日本人の多くは、無意識のうちに「集団に合わせようとするDNA」を持っているのかもしれません。ですから、必要とあらば「出る杭」になることを厭わない私でさえ、新しい集団に入った時には、ついつい人目を気にして緊張してしまうのです。

 もちろん、集団の調和を重んじること自体は、コミュニティを維持したりチームワークを円滑にしたりするのに必要な「美徳」のひとつかもしれません。しかし、集団優先の思考が過剰になって、全員が「ことなかれ志向」「思考停止」に陥ると、今度は組織全体が「変化への適応力」を失って危険な状態になります。

 私が証券会社の営業本部で体験した「バブル崩壊」の直前は、まさにこうした状況でした。誰もが浮かれて、株価上昇の「宴」が永遠に続くような共同幻想を抱いていました。もちろん、おかしいと思った人もいたのでしょうが、誰も言いださないままに暴落へと突き進んでいたのです。

 だからこそ、真のリーダーは、多くの同僚や関係者に否定されることを恐れず「勇気ある直言」をする人を常に探し求めています。そして、自分の側近になってほしいとさえ願っているはずです。

 とはいえ、組織の存亡をかけた「ここぞという時」こそ、誰もが聞く耳を持たない時でもあります。そんな時に、いきなり直言するのは難しいことです。

 ですから、常日頃から、小さな勇気を出して「白い目」を浴びても動じないレッスンをしておく必要があります。「受け流す」「跳ね返す」「転じる」という3つのステップで上達するレッスンを積んで、ここぞという時に備えておきましょう。

1.「受け流す」一定割合の批判を自然の摂理とわきまえて気にしない

 多くの先人が経験則で伝えるように、どんな意見に対しても、平均すれば「2割は賛成、2割は反対、6割はどちらでもない」という割合に落ち着くでしょう。先鋭的な意見であれば、賛成派が減ったり、意見表明が控えられるかもしれませんが、大きくはブレないものです。

 面白いことに、私が経験の浅い若手サラリーマンだった時も、現在の実績を積んだオーナー経営者になった今も、何かを新しいことを言いだした時の「白い目」の割合は、あまり変わらないということです。

 うまく行ったらうまく行ったで、もっと先を行く「過激な意見」を言うからかもしれません。また、実績を積んで成功したからこそ、これまでとは違う「嫉妬」を浴びてしまうこともあるでしょう。

 ですから「自分がダメ」だから白い目を浴びるのではなく「自然の摂理」とはそういうものだと納得すれば安心です。「いつでも一定割合は批判に回る」のだと心しておく必要があるのです。

 だとすれば、「白い目」を、いちいち気にしていても仕方がありません。特に2割の厳しい反対は「受け流す」ことで、2割の賛成意見に「素直に耳を傾ける」ことができるのです。

2.「跳ね返す」あえて変人であることを誇って定評にする

 批判を「軽く受け流す」ことができるようになったら、今度は「確信犯」として、人と違ったことを堂々とする「変人」を目指してみましょう。

 最初は、「変人」を目指すのは「大変な難行」に見えるかもしれません。周囲から、白い目ばかりか、ちょっとした抵抗にも合うでしょう。

 しかし、「変人」暦の長い私の経験では、日本はひそかに「確信犯の変人」に「寛容」な社会です。3ヶ月も変人を続けていると、「あの人は変人だから」と定評が広まって、やがて抵抗がなくなってくるのです。日本特有の集合無意識が、ひょっとしたらみなさんの「覚悟」を試している。そんな試用期間なのかもしれません。

 まずは小さなことから始めましょう。

 例えば、20年近く前に私は丸の内の証券会社の本社に自転車通勤を敢行していました。今では当たり前の自転車通勤ですが、当時は、盗まれないように車輪を1つもってオフィスに入る私を見る目は、変人を見るそれでした。

 また、オフィスビルでの内勤と地下でのランチでは日照時間と運動が足りないことに気づいて、デパートの地下でお惣菜を買って日比谷公園での「おひとり散歩ランチ」を楽しむ生活に切り替えました。もちろん「付き合いの悪いやつ」と白い目を集めましたが、そのおかげでリフレッシュできたため様々なアイディアが浮かびました。

 不思議なことに、3ヶ月ほどで、みんなも「変人ぶり」に慣れ、私自身も「変人と扱われること」に慣れました。そして無意識のうちに、これまでにない潜在的なパワーが私の底から湧きあがるのを感じました。「変人を貫く」ためには、仕事もそれ以上にこなさねばという「跳ね返す強さ」が生まれたからでしょう。

3.「転じる」批判した人ほど最後は応援してくれるありがたさを知る

 こうして「変人」と呼ばれることを厭わず、新しい試みをいくつも試して続けていくうちに、少しずつ流れが変わってくることを体験するはずです。また運良く成功に恵まれることもあるでしょう。

 ここで大切なのが「転じる」心得です。むしろ、当初は批判していた人こそ、積極的に仲間に迎え入れて、成功の果実を分かち合う大きな気持ちが大切なのです。

 もともと批判していた人たちも、みなさんのことが嫌いだったわけではなく、慣れ親しんだことを変えるのが嫌だっただけかもしれません。だとしたら、ひとたび方針が決まったら、誰よりもまじめに辛抱強く守り続けてくれる、応援してくれる=転じる可能性が高いのです。

 これは単なるポジティブ・シンキングではありません。ポジティブが良くて、ネガティブが悪いと考えるのは、「人間の狭いはからい」です。時間の経過と共に、陽転するものもあれば、陰転するものもあるのが「自然の姿」なのです。

 例えば、当初から応援してくれた賛成派の中に、過度に慢心をしたり手柄を自分のものにする人や、多くの人を仲間に巻き込む人のを嫌う人も出てくるものです。こうしたことを嘆いたり怒ったりすることなく、当初の賛成派が調和を乱す方向に「転じる」影響を小さくすることが大切です。ですから変化に先んじて、次の課題に一緒に挑戦するといった気配りをしましょう。

***

 こうして、新しいことが始まって形になっていくプロセスを一度でも経験すれば、人生観が変わります。その時に起こる「人の心の大きな変転」の経験則が見えれば、そこであえて「変人を演じる」自分の役割やその意味もわかるからです。

 一時の否定は、この大きな流れの中の、小さくて瞬間的なプロセスに過ぎません。それを恐れずに行動する人こそが、やがて大きな流れを作り出すのです。

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 ◎Q1-1:自分の好みを出すのが恥ずかしい
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 ◎Q2-3:アピールの仕方がわからない
 ◎Q2-4:実績をアピールするのが嫌味に感じる
 ◎Q2-5:「調子に乗っている」と思われたくない
 ◎Q2-6:評価軸がわからない
 ◎Q3-1:自分に興味を持ってくれる気がしない
 ◎Q3-2:自分より優秀な人とどう付き合えばよいかわからない
 ◎Q3-3:自分が認めた人にだけ認められたい
 ◎Q3-4:うまくメールや手紙が書けない
 ◎Q3-5:相手の気持ちを動かせない
 ◎Q3-6:叱られると凹む

久米 信行 網縁作務処
国産オリジナルTシャツ@久米繊維
グリーン電力×オーガニックコットン×アート@T-galaxy.com
ブログ起業論講師@明治大学商学部  

2009年03月01日(日)更新

【久米信行新刊】Q3-6:叱られると凹む

10万部突破!『すぐやる!技術』の著者であり、当「経営者会報ブログ」のプロデューサーでもある久米信行さんの次回作ご執筆原稿をリアルタイムで公開させていただいております!
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Q3-6:叱られると凹む
A3-6:叱られるのはありがたい。いつかご恩返しを。


 「いつも叱られてばかりでつらい」
 「どうせ自分なんかだめなんだ」


 私にも、なぜこんなに叱られなければならないのだろうと凹む時期がありました。そんな辛い職場や、厳しい上司にあたってしまったことを嘆いたこともありました。

 しかし、今は違います。叱ってくれることは大切な愛情表現の1つであり、とてもありがたいことだったのです。私のことを思えばこそ、あえて憎まれ役になってでも叱ってくれたのです。そんな義と勇気に富んだ先輩に恵まれたことに心から感謝をしています。

 年を重ねて、役職にもつくと、少しずつ叱ってくれる人がいなくなるのは、辛くて悲しいことなのです。

 ましてや、最近は真剣に叱ってくれる大人が減りつつあります。

 私が育った昔の下町では、たとえ見知らぬ子供であれ、あいさつをしなければ怒られ、銭湯ではしゃぎすぎては叱られました。同じ街に住む人は、みんなコミュニティの一員であり、そこにいる子供たちをみんなで躾けることが当たり前の義務であり、未来のため全体のためだと信じられていたからでしょう。

 昨今は、例えば、電車の中で無礼を働く人に注意すると逆ギレをされて危ないと「見て見ぬ振りをする人」が増えています。また学校でも職場でも、叱り方を間違えると、自宅に引きこもったり、パワハラや人権問題だと訴えられたりしそうです。その後輩のため、さらには未来の世の中のためにと強い覚悟と意志を持ち、半ば自分を捨てなければ叱るに叱れません。

 だからこそ、叱ってくれた時、叱ってくれた方には、感謝の気持ちで真剣に接しなくてはなりません。叱られる側の覚悟も大切なのです。

1.叱られた理由と、あるべき姿を理解して記録する

 叱られた時は、気分が高ぶったり凹んだりして、肝心の叱られた理由を冷静に考えられなくなっています。そこで、まずは心を鎮めて、叱られた理由とあるべき姿を聞き出して理解します。その上で、しっかり言葉や図表に書き留めて、心に刻むことが大切です。例えば「こんなことも知らんのか」と叱られたら「時事問題に詳しくない」ことが問題点で、「経営者並みに詳しくなる」ことがゴールなのです。

2.叱られなくなるためのTO DO LISTを用意する


 問題点とあるべき姿がわかったら、それを解決するためのTO DO LISTを作ります。「経営者なみに時事問題に詳しくなる」のがゴールなら、TO DO LISTは、「NHK BSの海外ニュースを毎日見る」「ビジネス書のベストセラーを毎週1冊読む」などになるでしょう。これを、手帳やスケジューラーに書き込んだり、ベッドやトイレに貼り出したりすることも大切です。

3.TO DO項目を自動化した習慣になるまで繰り返す

 TO DO LISTに書いたことは、しっかり繰り返して、毎週末に自分でチェックすることが大切です。その成果を、毎日ブログに書いても良いでしょう。とにかく、毎日繰り返し試みることで自然に体に覚え込ませることが大切です。意識しなくとも続けられるように習慣化すれば、同じ間違いで叱られることも減るでしょう。

4.続けられるようになったら叱ってくれた人に報告する

 まずは3ヶ月続いたら、叱ってくれた上司や先生に、報告してみましょう。「先日はお叱りいただいてありがとうございました。それ以来、毎日○○を自分に課して続けています。まだ成果は出ていませんが、これからも続けます。」こんな報告を受けたら叱った人も驚き、うれしくなるでしょう。まさに「叱り手冥利」について、ますますアドバイスをしてくださるようになるはずです。

5.習慣化できてから、自分流に取捨選択、改良する

 そして1年、3年と地道に努力を重ねて行けば、きっと効果があらわれて、叱ってくれた人も成長を認めてくれるはずです。その効果を見極めてから、自分らしいスタイルに改良すれば、まさに血肉になるでしょう。その頃は、新たに「叱られてわかった課題」もあるでしょうから、次のチャレンジを繰り返していきます。

6.いつか、部下や教え子たちに対しても叱れるようにする

 こうして、叱られたことを成長に結びつける体験を繰り返すうちに、そのありがたみも身にしみてきます。そして、いつかは自分が逆に叱る立場になって、部下や後輩に、そのご恩を返さなければならないことを知るでしょう。そして、後輩を叱った時の凹んだり怒ったりした表情を見れば、ますます師のありがたみを実感するでしょう。

7.最後は、誰に対しても叱るべき時に叱れるようになる


 部下や後輩を叱ったり励ましたりして成長させるお手伝いができるようになったら、最後のステップです。直接は深い関係のない、街で出会った人や、ふと隣に居合わせた人であっても、叱るべき時には叱れるように、ほめるべき時はほめられるようになりましょう。おせっかいの変人だと思われようがかまいません。そんな大人が一人でも増えていくことで、未来の大人が育っていくのです。


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 ◎Q2-4:実績をアピールするのが嫌味に感じる
 ◎Q2-5:「調子に乗っている」と思われたくない
 ◎Q2-6:評価軸がわからない
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 ◎Q3-3:自分が認めた人にだけ認められたい
 ◎Q3-4:うまくメールや手紙が書けない
 ◎Q3-5:相手の気持ちを動かせない


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