大きくする 標準 小さくする
前ページ 次ページ

2009年02月07日(土)更新

【久米信行新刊】Q2-2:保守的な人に足を引っ張られる

10万部突破!『すぐやる!技術』の著者であり、当「経営者会報ブログ」のプロデューサーでもある久米信行さんの次回作ご執筆原稿をリアルタイムで公開させていただいております!
ぜひコメント、トラックバックをお寄せください。


Q2-2:保守的な人に足を引っ張られる
A2-2:反対者まで味方にする社内営業術を知る


 「どんなアイディアも難クセをつけられる」「社内営業で8割のエネルギーを使う」


 せっかく勇気を出して新しい提案をしたのに、なんと直属の上司や、味方だと思っていた社内の別部門に足止めをされてしまった。そんな苦い経験をお持ちの方も多いでしょう。

 私も、大手証券会社で新規事業を担当していた時に、社内営業の大変さを思い知りました。会社のために良かれと思って提案した企画が、予想外の反対を受けて暗礁に乗り上げてしまうのです。

 そんな中で、私が尊敬する上司から教わったのは、衝撃的な経験則でした。

 「大企業の部長ほど保守的な人はいない。それは、役員目前で原点となるミスをしたくないから。だから、自分が部長を務める間は新しいことをしようとしない。それが大企業を停滞させている。」

 しかし、愚痴をこぼしていても何も始まりません。私なりに、大企業での意思決定プロセスを学び、最後には、多くの当事者の理解を得て企画を通しやすくする「社内営業術」を身につけました。


1.まずは真のオピニオンリーダーとキーマンを知って根回し


 いくら、大企業とは言え、実際に新しい戦略を立案するオピニオンリーダーと、それを承認してリスクを負うキーマンは限られています。それは部長ではなく、次長や室長であることも少なくありません。

 いちはやく、多くの人から意見を聞いて、カギを握る人物が誰かを知ることが大切です。真っ先に、そして密かに相談して支援を取り付けなければなりません。オピニオンリーダーやキーマンが、会議で前向きな発言をしてくれれば、保守的な人もなびきやすくなるからです。


2.根回しする上司の好みの書式を知ってから書く

 企画書を根回ししている時に、その「内容」ではなく「書式」に文句をつけられてショックを受けた事がありました。「字が小さい」「フォントが嫌い」「罫線を太い方がいい」「四画の角を丸くして」といったことは「本題とは無縁の細かいこと」に思えて、キレそうにもなったこともありました。

 しかし、裏返して考えれば「お好みの書式」にするだけで「企画が通りやすくなる」のですから「お安い御用」なのかもしれません。現に、ある中央官庁の友人に聞いたところ、関連する大臣や議員の先生別に、お好みの書式を調べて関係者で共有していると聞きました。

 ですから、企画を認めてもらうための重要関係者のリストを作るなら、そこに「お好みのフォントと大きさ、罫線の種類と形」などを聞き出して一緒に記録しておきましょう。そして、企画書の体裁を、お好み通りに整えてから根回しをしましょう。


3.完璧な企画書よりも、明白な欠点が見えやすい企画書で根回し

 会議で何か企画書のアラを見つけて指摘するのを、自分の仕事だと考えている上司も多いものです。本番の会議の席で、そうして「存在意義を発揮」されては、まとまる話もまとまらなくなります。

 かといって、事前に根回しをする際に、アドバイスできないような完璧な企画書を持っていっても可愛げがなくて歓迎されないものです。そこで「あえて重要な点が欠落している」ような「未完成の企画書」をお見せして、むしろ積極的に教えを乞えるようにしました。

 もちろん「自分が気がつかない点」を助言してくだされば本当にありがたいことです。また「気づいていたのに書かなかった点」を指摘されても、、まさに「わが意を得たり」と歓迎すべきことなのです。


4.根回しの時点でリスクと面倒がないことを強調する


 多くの場合、根回しで一番問題となるのは、そのプロジェクトが「全社に長期的な利益をもたらすか」ではありません。保守的な人であればあるほど、他部門が提案する企画によって「自部門にどんなリスクと手間が発生する」かの方が気になるのです。

 ですから、他部門の保守的な部長や課長に提案する時には「リスクを回避できる妙案」や「余計な仕事が増えない方策」を考える必要があります。

 その上で、根回しの時に先回りをして「リスクと手間について説明する」ことで「心配を払拭」しておけば、会議はよりスムーズに進むでしょう。

 
5.本番のプレゼンでは、各部門キーマンのアドバイスを積極紹介

 いよいよ本番の会議で、企画についてプレゼンをする時には、あくまでも謙虚にいきたいものです。もちろん、企画書は「根回しの時にいただいたアドバイス」の数々を盛り込んで、完璧に仕上げておきます。

 そして、プレゼンの中で「○○の問題につきましては、□□部長のアドバイスをいただき、このように工夫いたしました。」と謝意を示しながら紹介します。そうすれば「自分だけの企画」が「みんなの企画」に昇華されて共感が得られやすくなるはずです。

 そして、ここぞというところで真のオピニオンリーダーの賛同を得て、最後にキーマンが承認をほのめかしてくれれば、保守的な人も賛成に回ってくれることでしょう。


【バックナンバー】
 ◆今春出版予定! 久米信行さん著書第二弾を当ブログで連載開始!!
 ◎Q1-1:自分の好みを出すのが恥ずかしい
 ◎Q1-2:自分が思っているよりも周りからの評価が低い
 ◎Q1-3:失敗して笑われるのが嫌だ
 ◎Q1-4:言いたいことを伝えるのが苦手だ
 ◎Q1-5:「柄にもない」と言われそうでイヤだ
 ◎Q2-1:「空気」を気にしすぎてしまう
 ◎Q2-2:保守的な人に足を引っ張られる
 ◎Q2-3:アピールの仕方がわからない
 ◎Q2-4:実績をアピールするのが嫌味に感じる
 ◎Q2-5:「調子に乗っている」と思われたくない
 ◎Q2-6:評価軸がわからない
 ◎Q3-1:自分に興味を持ってくれる気がしない

久米 信行 網縁作務処
国産オリジナルTシャツ@久米繊維
グリーン電力×オーガニックコットン×アート@T-galaxy.com
ブログ起業論講師@明治大学商学部  

2009年02月04日(水)更新

【久米信行新刊】Q2-1:「空気」を気にしすぎてしまう

10万部突破!『すぐやる!技術』の著者であり、当「経営者会報ブログ」のプロデューサーでもある久米信行さんの次回作ご執筆原稿をリアルタイムで公開させていただいております!
ぜひコメント、トラックバックをお寄せください。



Q2-1:「空気」を気にしすぎてしまう
A2-1:3者の視点で空気を変える人が求められている


 「空気が読めないヤツ」


 今や、そう言われることを何より恐れている人が増えているように見えます。テレビのバラエティ番組などでお笑い芸人が「空気が読めない」と使う時、この言葉は「気が利かない」「面白い発言やリアクションができない」即ち「つまらなくて使えない人」と同義語だからです。

 しかし、同じ言葉でも、ビジネスの世界で使われる時には「意味がねじ曲げられている」ように思えます。
 
 「お得意様や上司が言う事には逆らうな」
 「せっかく多数決でまとまりそうな話をひっくりかえすな」
 「昔から決まっているルールに疑問を持つな」


 即ち、「長いものには巻かれろ」といった語意が感じられるのです。ともすれば、若い人財に「受け身で保身型の処世術」を強要するために悪用されているのではないでしょうか?
 もちろん、「TPO=時×場×目的をわきまえる」「そこに参加している人たちの心の動きを察する」という点で「空気を読む」ことは大切です。しかし、現状維持の方策では解決できない激動期には、あえて「空気を読んだ上」で「空気を変えること」が求められているのです。頭の固い上司には浮かばない斬新な発想こそ、トップが若い人財に望んでいるはずです。

 もしも、満場一致で決まりそうな会議、慣例や惰性で決まりそうな場面があったら、それはチャンスです。心と頭を柔らかくして、あえて3者の視点で「空気を変える」発言をしてみましょう。


1.お客様の視点で「空気を変える」


 ビジネスの世界で、王様はお客様です。しかし、気がつけばその基本を忘れて、作り手視点、売り手視点で「自社の都合の良い発想」をしてしまいがちです。

 そんな時、私は、この商品やサービスを「自分だったら買うだろうか?」「家族が喜ぶだろうか?」と発想します。一番、仲良しのお客様を思い浮かべてもいいでしょう。すると「これはおかしい」と思う場面に、きっと何度も出くわすはずです。

 今は、若い人たちがモノやコトを買わない=お金を使わない時代です。多くの企業が、若者向けのマーケティングに頭を悩ませています。だからこそ、「自分自身の心に聴いた」素直で率直な発言に、ハッとするリーダーが多いはずです。

 だからこそ自信を持って「自分がお客さまだったら」という生活者の視点で発言しましょう。


2.創業者の視点で「空気を変える」

 どんな会社も、創業者が立派で、起業の理念が社会に受け入れられたからこそ軌道に乗り、今も存続しているはずです。しかし、長い年月を経ると、創業者が志した理念は形骸化したり忘れ去られたりしていくものです。

 ですから、誰よりも創業者の歩みや発言をよく調べて、会社でも1、2を争うぐらいの「創業者通」になることをお勧めします。そして「自分が創業者だったらどう思うか?どんな手を打つか?」と、いつも発想するように鍛錬するのです。

 そうすると、時には「創業者ならこんな商品は作らない、こんなサービスは許さない」と思うような局面にぶつかるはずです。こうした状況を見過ごすことは簡単ですが、実は深刻なのです。長い目で見ると、長くご愛顧いただいたお客様が離れたり、社会を騒がす不祥事につながることも少なくありません。

 若輩ものが「空気を変える発言」をするには勇気が要ります。しかし、「もし創業者だったら....」と冒頭に付け加えて直言すれば、言葉の重みが違います。この言葉にドキッとしない、その意見に耳を傾けないリーダーはいないはずです。発言が「なるほど」と気づきを生むものなら、きっと、みなさんを見る目も変わるでしょう。


3.50年後100年後の子孫の視点で「空気を変える」

 企業の究極の目的は、規模の拡大や利潤の最大化ではありません。時代に合わせて変化し、進化を繰り返しながら、長期にわたって存続することです。しかし、長期的で社会的な行動をすべき上場企業ほど、株式市場に振り回されて、目先の利益や株価に心が奪われているように見えます。

 また、ただ企業が存続すればいいというわけでもありません。例えば、私が一番恐れているのは、今から50年後に私の孫やひ孫たちに「おじいちゃんの会社は続いたけれど、地球を汚したよね」「ひいおじいちゃんの会社は、地元に迷惑をかけたよね」と嘆かれることなのです。

 だからこそ、もし会議の場で、「今はいいけれど、将来に災いをもたらすような選択」それも「社会的に影響が大きい選択」を目にしたら会社の一大事です。すぐさま「50年後100年後に私たちの子孫が、どのように思うでしょうか?」と直言して欲しいのです。

 多くの人は、この厳しい経営環境で何を悠長なことを冷たい視線を浴びせるかもしれません。しかし、心ある経営者や上司なら、ハッとして耳を傾け、意見を認めてくれるはずです。

***

 この3つの視点は、いずれも日本で忘れられつつある「義」を重んじたものです。誰が何と言おうと批判を跳ね返し、自分の意志を貫くためには、いつの世も「義」が大切なのです。

【バックナンバー】
 ◆今春出版予定! 久米信行さん著書第二弾を当ブログで連載開始!!
 ◎Q1-1:自分の好みを出すのが恥ずかしい
 ◎Q1-2:自分が思っているよりも周りからの評価が低い
 ◎Q1-3:失敗して笑われるのが嫌だ
 ◎Q1-4:言いたいことを伝えるのが苦手だ
 ◎Q1-5:「柄にもない」と言われそうでイヤだ
 ◎Q2-1:「空気」を気にしすぎてしまう
 ◎Q2-2:保守的な人に足を引っ張られる
 ◎Q2-3:アピールの仕方がわからない
 ◎Q2-4:実績をアピールするのが嫌味に感じる
 ◎Q2-5:「調子に乗っている」と思われたくない
 ◎Q2-6:評価軸がわからない
 ◎Q3-1:自分に興味を持ってくれる気がしない

久米 信行 網縁作務処
国産オリジナルTシャツ@久米繊維
グリーン電力×オーガニックコットン×アート@T-galaxy.com
ブログ起業論講師@明治大学商学部   

2009年02月03日(火)更新

【久米信行新刊】Q1-5:「柄にもない」と言われそうでイヤだ

10万部突破!『すぐやる!技術』の著者であり、当「経営者会報ブログ」のプロデューサーでもある久米信行さんの次回作ご執筆原稿をリアルタイムで公開させていただいております!
ぜひコメント、トラックバックをお寄せください。


Q1-5:「柄にもない」と言われそうでイヤだ
A1-5:日頃のイメージを裏切るほど印象に強く残る


 「柄にもない」「君らしくもない」


 せっかくやろうとしていたのに、誰かにそう言われた瞬間「心のブレーキ」がかかって、あきらめてしまった経験はありませんか?

 しかし、「柄にもない」と呼ばれるようなことこそ、現状をブレークスルーする決定打になることもあります。だから、今すぐ「心のアクセル」を踏むべきことかもしれません。それが成功するせよ失敗するにせよ、本来の自分を周囲に理解してもらい、まわりの見る目を変える好機になる可能性も高いのです。
1)ジョハリの窓と「人柄の死角」を知ろう

 考えてみれば、「柄にもない」などと「もっともらしいアドバイス」を直言する資格がある人などいないはずです。同僚や友人はもちろんのこと、両親など目上の親族や、会社の上司など先輩であっても、軽々しく助言はできないのです。

 なぜなら、みなさんの「本当の人柄」や「自分らしさ」、さらには「将来の可能性」や「潜在的な能力」を正しく見極めて人は、親しい身内の中にも、ほとんどいないからです。「自分のことを自分以上に理解してくれている」ような「師匠」しか、本来言ってはいけないセリフでしょう。

 「ジョハリの窓」と呼ばれる「自分を理解するためのマトリクス」をご存知でしょうか? 

 横軸に「自分が知っている自分」と「自分も知らない自分」、縦軸「周りの人が知っている自分」と「周りの人が知らない自分」を取ると、「2×2=4領域のマトリクス」ができあがります。

 「柄にもない」というのは、「周りの人が知っている(と思っている)自分」の領域で、騒ぎ立てられることです。いくら騒がれても、実際には「自分が知っている自分×周りの人が知らない自分=自分だけが知っている隠された自分」の領域は、いわば「死角」になっています。自分以外には見えていないわけです。


2)大きな危機や転機で「自分も知らない自分」が発動する

 また、「柄にもない」と思われることに挑戦することは、みなさんにとって、いつも以上にリスクの大きな体験になるでしょう。そこでは「想像を超えた困難」や「危機的状況」に見舞われることもあるはずです。また、「予想外の出会い」に恵まれて「人生の転機」になることもあるでしょう。

 そんな時、ジョハリの窓で言うならば「自分も周りの人も知らない未知の自分」が目覚めることも少なくありません。

 私も「柄にもない」挑戦をした結果、現状を突破できたブレークスルー体験を数多く味わうことができました。

 ゲームもゲーマーの子供たちも嫌いだった「文系の元ボーイスカウト」が、ゲームデザイナーの仕事に夢中になりました。大学では「中国の現代社会主義経済」を学ぶゼミの代表を務めたのに、証券会社ではファイナンシャルプランナーを養成する仕事に燃えました。

 そしてローテクのTシャツメーカー経営者でありながら、「柄にもなく」経営情報学会に誘われて、インターネットに挑戦しました。その結果、いつしかIT関係の連載や講演も増えて、明治大学「ブログ起業論」の講師も務めています。

 こうして、若い頃には想像だにしなかった方向に人生が展開していきました。そして、自分でも気づかなかった能力を磨くことになって驚いているのです。


3)柄にもないと言った人ほど変化に驚き、認めてくれる
 
 もちろん、私以上に驚いたのは、昔から私をよく知っている人たちでしょう。今、私が図らずもライフワークとしていることの多くは、私の身内や旧友にとって「柄にもないこと」「私らしくないこと」だからです。

 コンサルティング会社の内定を蹴って創業間もないベンチャーに就職する時も、証券会社に転職して新規事業に挑戦する時も、さらには、家業である構造不況業種の国産Tシャツメーカーを後継する時も、多くの人が忠告をしてくれました。私の「柄にもない」選択を心配してくれての心温まる「ありがたいアドバイス」でした。

 しかし、その時制止してくれた方々も、今では「私の挑戦」を認めて、大いに祝福してくださっています。むしろ「予想外の展開」だったからこそ、さらに喜んでくれているようにも思えます。

 例えば、証券会社への転職を大反対した父も、不幸にも「バブル崩壊を当事者として味わった実体験」が、「経営者としての最大の財産」のひとつと認めてくれているのです。

***

 ですから、「隠された自分」や「まだ見ぬ自分」が直観して、「心からやりたいと願っている」ことなら、誰が何と言おうと迷う必要はありません。その挑戦が、自分の能力を伸ばし、新たな縁を広げてくれる可能性が高いからです。その成否にかかわらず、周りが「君らしい」と思っているような「予定調和の展開」よりも、大いに注目されて後々認められる結果につながるでしょう。

【バックナンバー】
 ◆今春出版予定! 久米信行さん著書第二弾を当ブログで連載開始!!
 ◎Q1-1:自分の好みを出すのが恥ずかしい
 ◎Q1-2:自分が思っているよりも周りからの評価が低い
 ◎Q1-3:失敗して笑われるのが嫌だ
 ◎Q1-4:言いたいことを伝えるのが苦手だ
 ◎Q1-5:「柄にもない」と言われそうでイヤだ
 ◎Q2-1:「空気」を気にしすぎてしまう
 ◎Q2-2:保守的な人に足を引っ張られる
 ◎Q2-3:アピールの仕方がわからない
 ◎Q2-4:実績をアピールするのが嫌味に感じる
 ◎Q2-5:「調子に乗っている」と思われたくない
 ◎Q2-6:評価軸がわからない
 ◎Q3-1:自分に興味を持ってくれる気がしない


久米 信行 網縁作務処
国産オリジナルTシャツ@久米繊維
グリーン電力×オーガニックコットン×アート@T-galaxy.com
ブログ起業論講師@明治大学商学部  

2009年01月28日(水)更新

【久米信行新刊】Q1-4:言いたいことを伝えるのが苦手だ

10万部突破!『すぐやる!技術』の著者であり、当「経営者会報ブログ」のプロデューサーでもある久米信行さんの次回作ご執筆原稿をリアルタイムで公開させていただいております!
ぜひコメント、トラックバックをお寄せください。



Q1-4:言いたいことを伝えるのが苦手だ
A1-4:一言にまとめよう!よく聴いて、ブログで補おう!


 「あなたの言いたい事を一言で言うと?」
 「なぜ?」


 大学で師事したゼミの恩師 平野絢子先生は、いつも、この2つの質問だけで学生たちを問い詰めていました。暗記するだけの試験勉強や、参考文献丸写しのレポートに慣れて、自分の頭で考えることをしなかった私は、答えられずに絶句するのが常でした。

 この2つの質問に簡潔な一言で答えられれば、そして答えが借り物ではなく自分自身で考えた内容であれば、たとえ幼い回答でも先生は褒めてくださいました。そんな2年間の脳トレーニングを経て、私は自分の言いたい事を伝えるための「シンプルな成功法則」に気づきました。
1)まず最初に、言いたい事を一言で言い切る

 多くの人は、言いたい事を伝えるためには、背景や前提などを長々と説明する必要があると考えています。しかし、その涙ぐましい努力はむしろ「逆効果」となる場合も多いのです。悲しいかな「言いたい事をわかりづらく」しているかもしれません。

 ですから、口下手な人でも心配する必要はありません。多くの言葉を使って長い文章を連ねても、ストーリーの組み立てや文章表現に工夫しても、言いたい事が伝わるとは限らないからです。それよりも、いかに「簡潔な一文」で結論だけを言うかに頭を使えば良いのです。

 慣れないうちは「私は賛成(反対)です」とか「私は好き(嫌い)です」などと単刀直入に意志を伝えるだけでも構いません。実のところ、自分の立場を「冒頭で堂々と言う人」は意外に少ないものです。だからこそ相手の印象にしっかり残ります。


2)理由は結論の後で、なるべく簡潔に伝える

 一言で結論を言ったら、あとはその理由を一文で添えるだけで構いません。その理由も簡潔な文章であればあるほど良いでしょう。

 例えば、「私は賛成です。当社の○○に関する強みが生かせるからです。」と言うだけで、結論と理由を合わせても「ごく短い時間」で伝えることができます。

 自信がない人や要領を得ない人ほど、長い文章を継ぎ足したくなるものです。しかし、最短の文章で伝える人こそ「頭がいい」と考えるリーダーが多いと心得ましょう。

 また、理由が複数ある場合には、例えば「その理由は3つあります」と冒頭で伝えましょう。その上で、「まず第1の理由は...」と箇条書きのように一文ずつ挙げるのです。そうすれば、相手は「耳で聞くだけ」でも「目で見るか」のように理解できるはずです。そして「頭がいい」という印象を短時間で持っていただけるようになるでしょう。


3)聴き上手になって、ここぞという時に質問と反復

 口下手な人ほど、話す事に意識を集中し過ぎて、聴く事がおろそかになりがちです。

 しかしながら、自分の言いたい事を伝えたければ、まずは相手の話をよく聴くことが大切なのです。多くの人は、自分の話を真剣に聴いてくれる相手にしか、心を開いてくれないからです。

 ですから、短く自分の意志を伝えたら、その後は、自分の発言をいったん忘れて、その感想に真剣に耳を傾けましょう。そうすれば、話し相手が、自分に関心があるか、どんな印象を抱いたかもわかるはずです。

 相手の話に耳を傾ければ、自然に興味がわいてきて質問したいことも浮かんでくるはずです。その質問を短く投げかければ、さらに真摯なメッセージが返ってきて、コミュニケーションが深まっていきます。もちろん、相手が自分に一番伝えたいメッセージについては、深くうなづいて反復いたしましょう。

 そうすれば深く共感してくれたお返しとして、みなさんが伝えたいメッセージにも、きっと耳を傾けてくださるはずです。


4)うまく言えなかったこと、言い足りなかったことはネットで補足

 とはいえ、面談時間には限りがあります。

 聴き上手になれば、相手の話がますます盛り上がりますので、逆に言い足りなかったことも増えるはずです。あえてその場で口を挟んで、自分の意見や経験を長々と展開すれば、逆に相手の気分を害することにもなるでしょう。

 そんな時は、お礼メールかお礼状をお出しする中で、しっかり補えば良いのです。口下手でアガリ症の人にも、この方法はおすすめです。

「先日は、楽しくて有意義なお話をありがとうございました。実は私も○○について深い関心があり、ブログでもご紹介しております。よろしければご笑覧ください。」

 こうして「写真入りのブログ」で自分のことを知っていただく方が、面と向かって話し言葉だけで伝えるよりも、はるかに楽で効果的なのです。

***

 よく聴いてみれば、テレビやラジオに登場する有識者も含めて、熱弁を振るっているのに「賛成」か「反対」かが不明瞭な人も多いことに気づくはずです。本人は雄弁だと自信があっても、実は、わがままで優柔不断な「時間どろぼう」なのかもしれません。

 ですから「言いたいことを伝えるのが苦手」だと思っている人は幸せです。ネットも活用した「省言葉×省気遣い×省エネルギーのコミュニケーション」を身につければ、労せずして相手と仲良くなって自分らしさも伝えられるからです。

 今こそ、なるべく短い言葉で伝えて、良く話を聴く事で、話し相手の満足度を最大限に高める「苦労ミニマム×効果マキシマムのコミュニケーション達人」を目指しましょう。 


【バックナンバー】
 ◆今春出版予定! 久米信行さん著書第二弾を当ブログで連載開始!!
 ◎Q1-1:自分の好みを出すのが恥ずかしい
 ◎Q1-2:自分が思っているよりも周りからの評価が低い
 ◎Q1-3:失敗して笑われるのが嫌だ
 ◎Q1-4:言いたいことを伝えるのが苦手だ
 ◎Q1-5:「柄にもない」と言われそうでイヤだ
 ◎Q2-1:「空気」を気にしすぎてしまう
 ◎Q2-2:保守的な人に足を引っ張られる
 ◎Q2-3:アピールの仕方がわからない
 ◎Q2-4:実績をアピールするのが嫌味に感じる
 ◎Q2-5:「調子に乗っている」と思われたくない
 ◎Q2-6:評価軸がわからない
 ◎Q3-1:自分に興味を持ってくれる気がしない

久米 信行 網縁作務処
国産オリジナルTシャツ@久米繊維
グリーン電力×オーガニックコットン×アート@T-galaxy.com
ブログ起業論講師@明治大学商学部  

2009年01月22日(木)更新

【久米信行新刊】Q1-3:失敗して笑われるのが嫌だ

10万部突破!『すぐやる!技術』の著者であり、当「経営者会報ブログ」のプロデューサーでもある久米信行さんの次回作ご執筆原稿をリアルタイムで公開させていただいております!
ぜひコメント、トラックバックをお寄せください。



Q1-3:失敗して笑われるのが嫌だ
A1-3:笑われる人ほど伸びる3つの秘密を知ろう


 「こんなこともできないのか?」「夢のような話ばかりして!」


 どんな理由であれ、勇気を出して行動したのに、その結果を人に笑われれば「へこまない人はいない」でしょう。

 しかし、私の半生を振り返れば「笑われたことこそが明日の糧になっていた」と実感するのです。それどころか「笑われるようなことだからこそ挑戦する価値がある」「笑われる人ほど大きく伸びる」と言っても過言ではないでしょう。

 人にさんざん笑われた後、5年後10年後に「笑った人を見返した経験がある人」なら、きっと賛同してくださるはずです。ここで「笑われるほどに強くなる3つの秘密」について考えてみます。
1)笑われることがバネになって勉強をする

 勉強不足や経験不足で初歩的な失敗をした時には、先輩になじられたり、同僚に笑われたりすることが多いでしょう。この時の悔しさや口惜しさは味わった人でなければわかりません。

 私も、大学教授やITスペシャリストが集う経営情報学会に誘われた当初は、飛び交うIT用語や経営用語の意味が、ほとんどわからない状態でした。基礎知識も経験もない若輩の中小企業経営者見習いにとっては、まさに場違いな「プチ修羅場」でした。今でも赤面するような恥ずかしい思いもたくさんしたのです。

 しかし、笑われた時に湧き起こる「こんな失敗は二度と繰り返さない」「いつか笑った人に一泡吹かせたい」という原始的な感情こそが「学びの原動力」になったのです。試験で点を取るための一夜漬けではなく、いつか学会のメンバーと対等に議論を交わせるような勉強をしたい。そんな実践的な底力を身に付けるべく、すごいと思う先生の真似をしたり、読書やネット検索を通じて勉強をしました。

 そんな積み重ねの結果、いつしかIT関連のコラムや本を書くまでになれました。そして、地元の商工会議所のIT分科会長や大学の講師を勤める縁にも恵まれたのです。

2)新しい可能性を秘めたことほど笑われる

 いつの時代でも、次代を拓く新しいものごとは、半ば変人と呼ばれるようなイノベーターによって始められることが多いものです。ビートルズの名曲「Fool on the hill」は、地動説を唱えたがために嘲笑されたコペルニクスを主人公にしているそうですが、昔も今も改革者は笑われて当たり前なのです。

 例えば、1996年に私がオンラインショッピングの新規事業を始めた時には「遅い回線、少ない顧客、画像なし」という三重苦もあって、時期尚早と笑われたものです。しかし、もしも、このタイミングで始めていなければ、日経インターネットアワード等を受賞したり、マスメディアで注目してもらえることもなかったでしょう。

 同じように、安価な中国製Tシャツがあふれてデフレが進行している最中に、オーガニックコットンなど地球環境に配慮した高価格商品に取り組んだ時も大いに嘲笑されました。ところが、その努力が実って、今では環境問題に取り組む企業やNPO法人から評価をいただいています。

3)それでも笑わない生涯の師匠や仲間が見つかる

 将来に意味を持つ新しいものは、一見すると怪しくいかがわしく見えて笑われがちです。しかし、未来を見通すリーダー層は、イノベーターの奇行の中に「新たなビジネスチャンス」を見いだすものです。

 ですから、みんなが笑う中でも、真剣に話を聴いてくれる人、叱咤激励してくれる人がいたら、その人こそ生涯の師や仲間と呼べる最有力候補かもしれません。考え方によっては、大多数の笑う人たちがいるおかげで、真のパートナーが見つかりやすいとも言えます。

 例えば「失われた10年」における私たちの挑戦を、多くの人たちが笑いました。しかし、環境品質と文化品質を追究した「日本でこそ作り得るTシャツ」を「インターネットで広める」という挑戦を笑わない人もいました。そして、ずっと応援してくれる縁者にも恵まれました。

 こうしたありがたいご縁も、「笑われることを厭わない挑戦」なくしては、「大多数の笑う人の存在」なくしては、育まれなかったのです。


【バックナンバー】
 ◆今春出版予定! 久米信行さん著書第二弾を当ブログで連載開始!!
 ◎Q1-1:自分の好みを出すのが恥ずかしい
 ◎Q1-2:自分が思っているよりも周りからの評価が低い
 ◎Q1-3:失敗して笑われるのが嫌だ
 ◎Q1-4:言いたいことを伝えるのが苦手だ
 ◎Q1-5:「柄にもない」と言われそうでイヤだ
 ◎Q2-1:「空気」を気にしすぎてしまう
 ◎Q2-2:保守的な人に足を引っ張られる
 ◎Q2-3:アピールの仕方がわからない
 ◎Q2-4:実績をアピールするのが嫌味に感じる
 ◎Q2-5:「調子に乗っている」と思われたくない
 ◎Q2-6:評価軸がわからない
 ◎Q3-1:自分に興味を持ってくれる気がしない
«前へ 次へ»